どのプラグインが良いのか
結論から申し上げると一長一短です。私はPolylangを採用しました。翻訳機能はなく、母国語と外国語の記事の関連付けをしてくれる比較的シンプルなプラグインです。これにしたのは私の目的にマッチしていたからです。
web上でお勧めされているプラグインは概ね試しました。それぞれの長所・短所と、記事作成過程で学んだ多言語化の注意すべき点を合わせて説明します。
多言語化プラグインの種類
多言語化プラグインは概ね4種類に分けられます。それぞれ試しました。
- サイト訪問者に機械翻訳を提供するもの
- サイト作成者に機械翻訳を提供するもの
- クラウドソーシングの翻訳者に依頼するもの
- 翻訳機能の無い、最小限度の機能のもの(Polylangはこれ)
プラグインのお話なので、翻訳会社に外注する選択肢は除外します。
サイト訪問者に機械翻訳を提供するもの
これは母国語の記事のみを作成しておき、ユーザーがボタンを押すことでgoogleのウェブサイト翻訳サービスへ転送し、機械翻訳をコスト負担なしで利用するものです。
Google Language TranslatorやTranslate WordPress with GTranslateがこれに該当します。
長所
- 設定で許可するのみで、利用人口が少ない言語も含めて簡単に多言語対応できます。
- 管理する記事が母国語の一種類になり、とてもシンプルです。
- プラグインも無料のものが多いです。
短所
- 検索エンジンからは、あくまで作成した母国語(日本語)記事の単語だけが検索されるので、サイト自体が人気でなければ、外国語ユーザーはあまり来ません。
- googleのウェブサイト翻訳サービスはgoogleからのツールの提供が終わっており、すでに所持している人のみ翻訳機能の提供が継続しています。プラグインはその状況を利用していますが、googleはブラウザの翻訳機能の利用を推奨しているので急にサービスが停止するかもしれません。
サイト作成者に機械翻訳を提供をするもの
これは母国語の記事を作成したのち、オーナーが各機械翻訳サービスのAPIを利用し翻訳済みの記事を作成するプラグインです。多くのプラグインがこれに該当します。
長所
- API翻訳サービスの利用コストはオーナーが記事作成時に利用する分のみなので、最小限の費用で機械翻訳を利用できます。
- API利用は有料でも、プラグイン自体は無料のものもあります。
短所
- 管理する記事の数が記事数×言語数になります。
- 機械翻訳によって不完全な翻訳済みの記事にしてしまうと、翻訳前の記事も読めるユーザーが正確な意味を推測できません。
- ブラウザで無料の機械翻訳が提供されている時代なので、サイト側でコストを負担して準備する必要性の問題が存在します。
- このタイプは最も注意が必要で、機械翻訳したままの記事を検索エンジンに登録させない指定(noindex指定)せずに公開すると、プログラムで記事を大量作成するスパムサイト同様のペナルティを受ける可能性がありますので手直し前提です。(記事が検索結果に出なくなったり)。別途詳しく後述します。
クラウドソーシングの翻訳者に依頼するもの
これは母国語の記事のみを作成しておき、プラグインからネットを経由してクラウドソーシングサービスの翻訳者に依頼する方式です。WPMLとLingotek Translation with Polylangがこの機能を持っています。(低級機能として他の項目に該当する機能も持っています)
長所
- 翻訳先言語のネイティブユーザーに依頼すれば、自然な文章に翻訳してくれるので、ユーザーが違和感なく利用するという点で多言語化の目的を満たします。
- 検索エンジンに、きちんと翻訳した記事として外国語ユーザーに表示してもらえます。
短所
- 管理する記事の数が記事数×言語数になります。
- 翻訳者でも意味の誤解はあるので、主語の無い母国語(日本語)の文を減らしたり等の工夫や、翻訳結果を簡易でもチェックする必要があります。
- 翻訳者権限の設定や依頼など高度な管理が必要で、プラグイン自体が有料のものが多いです。
- 翻訳者のレベルはプロから留学経験者程度まで様々です。語学検定の資格や経歴などを確認できます。
- 単価は安くて英単語一つ10円、または日本語1文字5円と言ったところです。経験や記事の分野によって数倍の違いがあることもあります。機械翻訳と比べたら50~100倍とかですが、相応の価値でしょう。
翻訳機能の無い、最小限度の機能のもの
これは母国語の記事も翻訳記事も自分で作成するものです。Polylangの無償版がこれに該当します。他のプラグインでも翻訳機能を利用しなければ同様のことはできます。これでもプラグインがする仕事は沢山あります。
- 言語ごとのURL構造の管理
(6cken.com/en/記事.htmlにしたり、6cken.com/記事-en.htmlにしたり等) - 記事のhtmlタグに言語情報を記述するなどのSEO対策
- 言語切り替えスイッチの追加
- カテゴリやタグ、人気記事、最新の記事等のメニューを言語ごとに切り替える。
(それぞれの言語ごとにこれらを翻訳して用意しておく必要がある) - トップページや各記事、About Me等の固定ページを言語ごとに切り替える
長所
- 検索エンジンに、きちんと(かどうかは翻訳の腕前次第ですが)翻訳した記事として外国語圏で表示してもらえます。
- 無料のプラグインが多いです。
- 機能が最小限であるため、設定が比較的簡単に済みます。
短所
- 管理する記事の数が記事数×言語数になります。
- 自分の時間と言うこの世で最も高いコストがかかります。
- 翻訳のクオリティが翻訳者(自分)次第です。
最終的に、このカテゴリに入るPolylangを選んだ理由
どれも一長一短ありますので、各位(ここでは私)の目的が大事です。自己紹介ページにも書きましたが、私は英語圏の友人にも紹介したいことを一部載せる目的ですので、
- 機械翻訳や翻訳者管理(Lingotek :Polylang連携プラグイン)が要らなければ無料でシンプル。
- 語学学習を兼ねる。むしろ学習したい。
- 一部の不自然な翻訳で格好がつかない感じ(言いたいことは分かるけどワロタ的な)になっても構わない。
- 補助として機械翻訳をかけると不自然な翻訳になることで、日本人でも読み間違えるかもしれない曖昧な表現や表記ゆれの発見につながる。
ということでシンプルなこれを選んだのでした。
下記のようなPolylangによって追加されたボタンを押すと表示される、
真っ白なページを見た一瞬は頭も真っ白になりますが、
日本語記事を全選択して貼り付けて、翻訳し始めると夢中になるものです。もちろんアイキャッチ画像やURL構造はバックグラウンドで関連付けされています。大量に多言語化するようなことがあったらLingotek Translationを追加してクラウドソーシングも依頼することになるかとは思います。
多言語化の注意点
個人レベルで運用するサイトの注意点ですが。
目的と必要性
プラグインの助けがあっても多言語化の労力は相当有るので、目的と必要性をよく認識しておく必要があると思います。
- 外国語の利用者が違和感なく快適に読め、親近感を持ってもらう事が目的の場合、不自然な翻訳があっては逆効果です。
- 日本に関心のある私の友人は、地域検索、機械翻訳、日本語の知識すべてを駆使して留学先の日本の情報を集めていました。日本語のままで記事を充実させた方が良いこともあります。
- 例えばエラーコード等の定型文や、固有の商品名など検索ワードが完全一致している場合、外国語記事でも表示される可能性があります。それで十分かもしれません。
- プラグインを使わず英語タイトルをつけて「【english transrated】from 日本語記事リンク」などど表記して翻訳版の記事をアップロードするだけで当分困らないかもしれません。
- 販売目的ならebay、交流目的なら海外で人気のSNS等に登録した方が、サイトを持って人を集めるより早くて確実です。
もっとも私は外国語記事2つと自己紹介の固定外国語ページ1つを書いて、言語切り替えを実装しただけでとても満足している位なので人によりけりですが。
多言語SEO
プラグインが多言語SEO(Search Engine Optimization, 検索エンジン最適化)対応を謳っていても様々です。
- htmlタグ中に、表記言語の記述や翻訳版がある事の明示
- 地域性を明示するためのURLやドメイン管理(~.jp、~.uk、.com/uk/)
- 応答性を考慮した各国サーバー、つまり複数サイトの連携管理
- etc.
細かく気にするなら、内容を精査する必要があります。
機械翻訳の注意点
機械翻訳によって多言語対応できれば便利なので、誰もが検討するとは思います。ですが現状ではとてつもなくデメリットがありますので、そのまま掲載するのは全くお勧めできません。
機械翻訳に対するペナルティ
上でも触れましたが、機械翻訳したままの記事を、検索エンジンに登録させない指定(noindex指定)せずに公開すると、ペナルティを受ける可能性があることを、少なくともgoogleは明言しています。
ウェブマスター向けガイドラインより抜粋
次のような手法を使用しないようにします。
・コンテンツの自動生成(コンテンツの自動生成より抜粋)
・検索キーワードを含んでいるが、文章としては意味をなさないテキスト
・自動化されたツールで翻訳されたテキストが人間によるチェックや編集を経ず公開されたもの~(中略)~
サイトがガイドラインに違反している場合、Google ではサイトに対して手動による対策を適用します。問題を修正した後、サイトの再審査をリクエストできます。
手動による対策リンクより
サイトに対して手動による対策が実施されると、そのサイトの一部またはすべてが Google 検索結果に表示されなくなります。
つまり、検索ワードを散りばめて意味が分からない文になっているような、SEOの悪質な例と一緒に並べられており、同様に検索結果に表示されなくなる対応を受ける可能性があるので注意が必要です。
機械翻訳の精度の問題
「自然な翻訳」とか「人間の翻訳者なみ」とのニュースが並び、誰もが多言語化に際して機械翻訳を試すと思います。私もgoogle、Azure、deeplの各種APIや翻訳エンジンを試しましたがどれも完璧ではありません。簡単な例をあげます。
会話で使う自然な日本語では、主語は話し手であると自明なので省略しますが、これが翻訳エンジンと相性が悪いです。翻訳した際に主語が挿入されますが「私達:us」なのか「私:I」なのか、前段の文章の「それ:It」なのか常に正しくは挿入されません。
翻訳エンジンが誤訳しない様な文章を日本語で書こうとすれば、「甲は乙に~する」のようにまるで契約書風の文章を書く羽目になってしまいます。言っていることは間違ってなくても不自然なのは容易に想像できます。
翻訳先の言語でも、公文書的な表現・新聞見出し・手紙などそれぞれで出てくる単語が違いますがその辺の配慮はありません。「こっちを見て」位の表現が「こちらを参照願います」の様に、文書に良くありがちな形式的な表現に置き換えられます。
記事の元になったプラグインと翻訳サービスについて
一通り多言語化プラグインを試したり、各翻訳エンジンを使って比較した結果分かることをまとめてみました。SEOで流行っているタイトルを付けていれば「多言語化プラグインおすすめ7つと機械翻訳サービス3つを使ってみて分かったことまとめ」とかになるのでしょうか。なんだかモヤッとするのでそうは書きませんが。この記事は以下を使った経験をもとに書いています。
プラグイン | 翻訳機能 | 最小機能での プラグイン価格 |
Polylang | 無し | 無料 |
Google Language Translator | google翻訳(無料) | 無料 |
Translate WordPress with GTranslate | google翻訳(無料) | 無料 |
WPML | Azure 提携の機械翻訳 または翻訳者に依頼 | 79$、以降59$/年 |
TranslatePress | google API | 無料 |
TranslatePress(+DeepL翻訳) | Deeple API | 199ユーロ/年 |
Lingotek Translation with Polylang | Azure 提携の機械翻訳 +人間のチェック(オプション) または翻訳者による翻訳(オプション) | 無料 |
Magic Post Translate | Deepl API | 無料 |
※APIと書いたもの:翻訳サービスに個人がライセンス登録(有料)してキーをもらい、プラグインに設定して使うもの。
※提携と書いたもの:プラグイン開発会社が翻訳サービスと提携していて、プラグインをインストールするだけで、ある程度の量まで無料で利用できるもの(翻訳量が多ければAPIを直接契約するよりは高くなる)。
※プラグイン自体が有料のものは、問題があれば期限付きの返金保証があります。
機械翻訳サービスもまとめます。
サービス | 料金 |
Microsoft Azure Translator S1 | 100 万文字あたり ¥1,120 (1年目まで毎月 200 万文字は無料。以降従量制) |
DeepL (DeepL GmbH社、ドイツ) | 翻訳済みのテキスト100万文字あたり¥2,500 +630円/月 |
Google Cloud Translation basic | 翻訳前100 万文字あたり $20 (12 か月間 $300 分無料。以降従量制) |
特に料金等は変わるかもしれませんので、利用する場合は確認をお願いします。
翻訳精度の差が気になるかも知りませんが、どれも文章によって一長一短です。翻訳者が訳した様な文を出力してそのまま公開したいという目的では、どれも使えません。
文章の種類によって翻訳結果が変わるので、各翻訳サービスはカスタマイズした翻訳リストなどオプションのサービスを提供しています。
Polylangの使い方は他の丁寧なblogさん達を御参照下さい。私もそれらを参考にしましたので。
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